韓国「WBC惨敗」の真相。国内リーグ隆盛が引き起こした代表の凋落 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Getty Images

 これならわざわざ日本に来て、外国人扱いとしてプレーすることもない。韓国でケガなくプレーしていれば、苦労知らずの生活が送れる。意識するかどうかは別として、そうした安定志向の選手は明らかに増えた。それと同時にWBCのような国際大会に「無理をしてでも頑張ろう」という気持ちは薄れていった。

 韓国代表の金寅植(キム・インシク)監督は、そうした若い選手たちにいつもこう訴えていた。

「恵まれた生活を送れるのは、野球ができるため。その野球ができるのは、国が安泰だから。そんなありがたみを少しでも理解しようとするのなら、国のために国際大会で汗を流せ」

 だがその言葉も、今の若い選手たちには浸透しなかった。いわば韓国の選手は「失うものを持ってしまったアスリート」というわけだ。

 事実、筆者の親しい韓国球界の関係者からも「今の選手たちは勘違いしている。"バブル"という言葉があるが、今の選手たちはまさにバブル世代。"必死さ"はもう韓国の代名詞ではない」という指摘があった。

 ただ、それだけで今回の敗退を語ることはできない。たとえば、韓国は一昨年に開催された『プレミア12』で優勝したが、そのときと今回のメンバーを照らし合わせても、著しい戦力ダウンというわけではない。

 長く韓国のプロ野球を見てきたが、面白くないと感じるようになったのはいつからだろうか。かつては、粗っぽさのなかにも激しさ、ひたむきさがあった。勝っても負けても、見る者にアピールするものがあった。しかし、今はそれが希薄になっている気がしてならない。ひと言でいえば、"韓国らしい魅力"が薄れてしまった。それは選手たちの「豊かさ」だけのせいではないと思う。

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