侍ジャパンを「正常運転」にさせた石川歩の強心臓と7本の内野ゴロ

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Getty Images

 地に足がつかない── 。まさにそんな立ち上がりだった。

 先頭のロエル・サントスに内野安打で出塁を許すと、続くアレキサンダー・アヤラのサードゴロを松田宣浩が弾く。いきなりの無死一、二塁。今まさに"赤い稲妻"に打たれようとしている"侍"は、明らかに地に足がついていなかった。

キューバ相手に4回1失点と開幕投手の大役を果たした石川歩キューバ相手に4回1失点と開幕投手の大役を果たした石川歩 そして、それは戦いを見ている観衆も同じだったのかもしれない。4回目となるWBC、侍ジャパンに向けられる視線は「期待」というよりも、常に「懐疑」という色が強かったように感じる。それは大谷翔平の出場辞退が伝えられ、大会前の強化試合で苦戦するたびに、より色濃くなっていった。

 侍ジャパンは本当に大丈夫なの── ?

 不安が渦巻く落ち着かない雰囲気のなか、飛び出したのは菊池涼介のビッグプレーだった。フレデリク・セペダが二塁横に放った強烈な打球を半身で抑え、すぐさま反転して二塁キャンバスの坂本勇人に送球。ダブルプレーが完成した瞬間、一瞬にして雷雲が消え去ったかのような爽快感があった。試合後、小久保裕紀監督は「菊池のプレーが大きかったですね」と讃えている。

 結果的に日本はキューバを相手に11対6で勝利し、大事な初戦で白星を得た。「ヒーロー」は菊池以外にもたくさんいた。3ラン本塁打を含む4安打4打点を放った松田、2度の美技で大量失点の危機を防いだ青木宣親、主砲らしい先制タイムリーと豪快な本塁打を放った筒香嘉智。

 だが、これらの活躍の裏には、先発投手である石川歩の奮闘があったように感じられてならない。

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