石井弘寿、悲運のWBCマウンドも「自分の決断なので後悔はない」 (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──石井さんはずっと「一軍で貢献するのが恩返し」と言っていましたが、選手としてはかないませんでした。現役引退後は、二軍の育成コーチ、投手コーチを経て、2017年シーズンから一軍の投手コーチを務めています。

「ピッチャーとしてチームに貢献できなかったことは本当に残念でした。でも、いまはコーチとして、自分の経験を若い選手に教える機会をいただいているので、その部分で貢献していきたいと考えています」

──現役生活を振り返って、後悔はありませんか。「WBCで無理して投げなければよかったのに」......とか。

「40歳を過ぎても活躍した黒田さんや三浦さんを見て、『肩の故障さえなければ......』と思うことはありました。でも、全部自分で決断してきた結果なので、後悔はありません」

──2016年シーズンは、長く肩の故障で一軍から離れていた由規が1786日ぶりに勝利。2013年に肩の手術を行なった平井諒も1236日ぶりに勝ち星をマークしました。

「由規も平井もリハビリ期間の長い選手でした。彼らの練習を見ていると、『どこか気になるのかな?』『ちょっとおかしいぞ』と感じることがあり、そういうときには個別に話をしました。ときには背中を押すことも必要ですが、親身になって話を聞くことも大事だと思います。故障をした選手の気持ちはわかるので、自分から声をかけるようにしていました。慎重に治したほうがいい選手と、リスクがあっても勝負しなければいけない選手がいます。それをしっかり見極めながら。

 リハビリを始めたばかりの選手は、どうしても心が不安定になるものです。『じっくりやれ』『焦るな』と言われても、焦るのは仕方がない。そこで『自分の言葉が伝わっているかな?』と確かめながら、フォローするようにしていました。そのうちに選手自身が変わってきて、メンタル面が強くなります。由規も平井も、最後は見守っているだけでした」

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