WBCの悲劇。そのとき、
豪腕サウスポー石井弘寿に何が起きたのか

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

──痛み止めを飲めば、痛みはなくなりますか。

「肩の中でいろいろな組織がぶつかっている状態なので、痛み止めを飲んでも痛いし、肩が上がらない状態でしたね。いま振り返れば、肩を休ませるのが最善の策だったと思いますが......」

──日本代表に選ばれたのに「投げられません」とは言いにくいですよね。

「3月の段階で仕上がっている投手が少ないなかで、『自分が投げなきゃ』と思っていました。もちろん、日の丸を背負っているという責任感もありました」

──WBCに向けて、それだけの覚悟があったということでしょうか。

「それまで肩やひじで深刻な問題に直面したことがなかったので、『ちょっとくらい無理しても大丈夫。大会後に1カ月くらい肩を休ませれば治る』と思っていました。リスクも感じていたのですが、自分から踏み込んだ形です。もしかしたら、安易に考えすぎていたのかもしれません。炎症さえ治まれば、また同じように投げられると思っていましたから」

張りを我慢して投げるのがプロのピッチャー

──世界一を目指して戦っているのですから、簡単には離脱できませんね。

「ピッチャーには、肩やひじの張りはつきものです。多少の張りを感じながら、みんな投げています。僕も、『投げろ』と言われたところで投げるのがピッチャーだと思います。ただ、東京ドームでの第1次リーグのときには、肩が悲鳴をあげていることに気づいていました。韓国戦は、肩から上に手が上がらないような状態で......痛みを麻痺させても、一球ごとに激痛が走り、まともに腕を振れませんでした。当然、満足なボールは投げられません」

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