伝説の豪腕・山口高志が藤浪晋太郎に見た「世界デビュー」の予感 (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Getty Images

 現時点で藤浪の起用法は決まっていないが、何事もなければ中継ぎ、WBC的に言えば"第2先発"が有力視されている。ただ、どういう形の登板であれ、気になるのが立ち上がりだ。山口氏が言う。

「第2先発ということ自体、日本の野球にはないポジションですので難しさがある。さらに藤浪の場合、立ち上がりに不安を残している。昨年まではあまりいい方ではなかったですからね」

 昨年は26試合に先発して78失点したが、うち32%にあたる25失点が初回だった。次に多かった2回の10失点を含めると、1、2回だけで総失点の約半分を占める。14勝を挙げた一昨年は、全70失点中、初回11点、2回8失点と昨年ほどではなかったが、立ち上がりに課題を残しているのは明らかだ。この点に関し、山口氏が興味深い話を聞かせてくれた。

「藤浪は試合前のブルペンとマウンドに上ってのボールは一致したり、しなかったり......ただ、マウンドに上って1、2球投げたら、その日の調子はだいたいわかる。そんなタイプでした」

 山口氏がブルペン担当だった当時、モニターに映る投球練習のボールから、注目していたのが左バッターのアウトコースだった。

「この真っすぐが指にかかって決まる。あるいは浮き上がるくらいのときはいいんです。それが左打者から逃げるような球筋だと厳しいかなと。高低がぶれるだけならバッターもスピードがある分、手を出しやすい。でも、打者から逃げていく球に手は出さないですから。そうなると苦しくなる」

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