炎上もプロセス。斎藤佑樹が決断した、切り札「スライダー」との決別 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 そこがわからないまま、野球をするのは苦しかったと斎藤は言っていた。それが、やっと自分なりの正解を見つけて、そこに向かおうという覚悟を決めることができた。腹を括ることができたのは、去年の悔しさがあったからだと、斎藤はこんな想いを打ち明けた。

「去年、チームが日本一になって、正直、すごく悔しい思いをしたんです。今までの日本一は、自分が中心にいたのに、去年は日本一になったチームの中心にいられなかった。それが本当に悔しかった......そのときに感じたのは、僕が高校や大学で日本一になったとき、中心にいられなかったメンバーに対して、僕はちゃんと気を遣えていなかったかもしれないな、ということでした。ファイターズが優勝すれば、僕にも『おめでとうございます』と言ってくれるじゃないですか。もちろんありがたい気持ちはありますけど、じつは、ありがたさよりも悔しさのほうが上回っていた。優勝して心底、喜ぶためには、真ん中にいるしかない。そう思ったら、自分の気持ちがすごく変わったのを感じました」

 ファイターズの栗山英樹監督は、今もなお、斎藤の特別な力を信じている。高校時代に浴びたすさまじい"追い風"と同じだけの"逆風"を吹かせることのできる斎藤について、「佑樹にはプロ野球の世界で果たさなければならない使命がある」と言い切っているのだ。斎藤佑樹であること、使命があると言われること、夏の甲子園で勝ったこと、プロで思うような結果を残せていないこと......そうしたことを今もなお特別視される現実を、斎藤はどう受け止めているのだろう。

4 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る