欠点だらけも自信は揺るがず。ソフトバンク田中正義は「本物のスター」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ソフトバンクの高村祐コーチは言う。

「ブルペンではいい角度で球が来ていますし、ボールの強さもあると思います。ただ、まだ本人も仕上がっていないと言っていますし、これからでしょう。(課題の)フィールディングについては、まだ何ができて何ができないのか、見極めている段階です」

 まずはスローペースで船出した、ドラフトの目玉のプロ1年目。だが、「5球団が重複1位指名した大卒ルーキーなのに......」と田中の現状を不満に思うファンもいるはずだ。田中のドラフト時の評価を疑う声があってもおかしくはない。「本当に5球団が指名するほどの価値がある投手なのか?」と。

 田中正義の名前が中央球界で知れ渡ったのは、大学2年の6月のことだった。大学選手権で最速154キロをマーク。あの百戦錬磨の亜細亜大打線が、「ストレートが来る」とわかってスイングしているのに当たらない。当時、このボールを見た誰もが「モノが違う」と認識したはずだ。

 150キロ台のスピードボールを投げる投手はアマチュア球界にも年々増えている。だが、田中のストレートは「強さ」が違う。ホームベース付近でも、まるでリリース直後のような爆発力を保ったまま捕手のミットを激しく叩く。18.44メートルをこんなにも短く感じさせる投手はなかなかいないだろう。チームの大先輩・斉藤和巳(元ソフトバンク)の全盛期を思わせるような、迫力満点のボールを持っている。

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