ヤクルト山中浩史がしみじみと語る「アンダースローの孤独と誇り」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 お尻のピッチングを知った山中のピッチングは「スリルとサスペンス」が満載だ。昨シーズンのフライアウトは49パーセント。打たれた瞬間は「ホームランか」という大飛球がフェンスを越えずにアウトになる場面が、1試合で何度も見られるのである。

「そういう(打者のタイミングをはずせた)アウトも嬉しいですけど、神宮や東京ドームでは成績が悪いんで(苦笑)。結果としてフライボールピッチャーになっていますよね。去年は長打で試合を決められることが多かったですし、自分としてはゴロも打たせたいですし、空振りも取りたい。万遍なくアウトを取りたいのですが、そのためにもっと幅を広げたピッチングがしたいと考えています」

 さて、アンダースロー投手はプロ野球の長い歴史のなかで数十人しかいないが、その中から数多くの一流投手が出ている。

「それは知っています(笑)。山田久志さん(元阪急/通算284勝)、足立光宏さん(元阪急/通算187勝)、皆川睦雄さん(元南海/通算221勝)。昔は多かったですよね。僕の世代では少なくなりましたが、渡辺俊介さんに牧田さんですよね」

── 山中投手も一流のアンダースロー投手への「入り口」に立っていると思います。

「まだまだそういうところまで到達していません。牧田さんは球が速いですし、渡辺俊介さんはバッターに近いところでボールをリリースしていました。そのことで打者に対しての間がすごく取れていた。山田久志さんは、日本シリーズで投げている動画を見ましたけど、球が速いですよね。ちょっと僕には難しい部分です。そういう意味で、これから誰を目指すのでなく"山中浩史"とはこういうピッチャーなんだという、自分の色を出せればいいかなと思っています」

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