栗山英樹が語るこれからの監督像
「オーラが必要という時代は終わった」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

── 去年は、大谷選手の二刀流や増井浩俊投手の先発転向など、ずいぶん思い切った采配も目立ちました。

「選手って自分の能力がどこにあるのか、案外、わかってないんだよ、マッスン(増井)だってそう。自分で先発できると思ってない。あんなに先発ピッチャーとしての能力が高いのに、その能力の高さがわからないんだ。そこを気づかせるのもこっちの仕事。

 去年の采配には驚いたってよく言われるんだけど、でも、こっちからしたら監督1年目には普通に考えていた類のことばっかりなんだよ。それが、監督を長くやればやるほど野球界の常識に引っ張られてしまうから、みんなが納得するような形に戻ろう、戻ろうとしてしまう。失敗しても『それが普通だよね、みんなこうするよね』みたいな安心材料を欲しがっちゃうんだよね。チームの中からの『野球ってこうですよ、監督、何やってるんですか』なんて声も、余裕が出てくると、聞こえてくるようになる。そこで、いつの間にか自分の感性がそういう声に引きずられてしまうのが怖い。だから、これは本当にオレがやりたいことなのかって、いつも自分に問いかけていたよ」

── 監督になったばかりの頃は"栗山英樹らしさ"と"監督らしさ"は対極のところにあると思っていたのですが、いつの間にか、"栗山英樹らしさ"をなくさないまま監督らしくなっているような気がします。そこは意識していますか。

「そこは、監督らしさを意識しないことがすべてじゃないかな。監督らしいことを考えたら、いろんなことが中途半端になるような気がするし、今までの監督らしさは必要ないと思ってやってるからね。どちらかといえば新しい監督らしさを作ろうと思ってやってるし、指導者も大きく変わらなきゃいけない時期にきていると思う。監督とはどうあるべきか......オーラが必要なんて時代は終わってる。これからは実務がちゃんとできるとか、そういう新しいイメージの指導者が求められるようになるよ」

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