栗山英樹が語るこれからの監督像
「オーラが必要という時代は終わった」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

── じゃあ、去年、初の日本一になって得られた達成感というのはどんなものですか。

「それは、若い子たちが少しずつ前に進んでいるのを実感できたことに尽きるかな。(大谷)翔平にしても、右足首のケガはあったけど、それでもこの4年間、大きなケガをせずにここまで来てくれたことに感謝しているし、嬉しいとか、やったとかいう達成感よりも、むしろ、よかった、ホッとしたという安堵感のほうが強いんだよね」

── 今年、連覇を期待されていますが、監督1年目に優勝したときも連覇という言葉が飛び交ったと思います。あのときの連覇と、今回の連覇......監督にとっての意味は違いますか。

「それはまったく違うね。今は、勝つことの難しさを知っているからさ。1年目はがむしゃらに、何が何だかわからないうちに勝って、2年目はどういう準備をしなきゃいけないのかわからなかった。でも、今年は1つ勝つのが大変で、どういうところに苦しみがあるのかを経験上、知っている。その分、何倍も怖いし、何倍も楽しみ。だから、思い切った手を打たなきゃいけないと思ってる」

── この5年間で、監督としてのアプローチは変わったと思いますか。

「根本にある考え方は変わってないんだけど、形を変えたというところはあるよ。たとえば、選手のために尽くす、我慢して使う、いつも向き合って話をする......そういうところは変わらなくても、それだけで気づけない選手には違う方法でメッセージを送るとかね。わざと選手から離れる、しゃべらない、試合で使わない、二軍に落とす、面と向かって叱る。気づいてもらうためにはそういうことも厭わない。つまり、監督としての本当の愛情の伝え方は何なのかというところが変わってきたんだろうね」

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