批判を覚悟でオ・スンファンをWBCに選んだ韓国代表監督のイバラ道 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Getty Images

 そこで切り札ともいえるカードを金寅植は切った。それが呉昇桓(オ・スンファン)の代表入りだ。今季、呉昇桓はセントルイス・カージナルスで76試合に出場し、6勝3敗、19セーブ、防御率1.92という素晴らしい成績を残した。投打に不安を残す陣容において、絶対的な抑えは最低限の"補強"にすぎないかもしれない。しかし呉昇桓の招聘は、一か八かの賭けだった。

 一昨年まで阪神でプレーしていた呉昇桓だが、当時、オフにマカオの不法賭博に興じていたことが発覚し、韓国の地方検察庁から召喚を受けた。結局は罰金刑で済み、アメリカへと旅立った。しかし韓国プロ球界としてもペナルティを与え、呉昇桓が国内リーグに復帰した際には、シーズンの半分に相当する72試合の出場停止処分が下されたのだ。

 とはいえカージナルスに所属している呉昇桓にとっては、いわば"影響のないペナルティ"。そのため国内の野球ファンや世論、マスコミの間では、「呉昇桓はまだ罪を償ってはいない」という考えが根強い。だから昨年11月の今大会の1次ロースター発表時に、呉昇桓の名前はなかった。ただその頃から、金寅植は呉昇桓の必要性を、マスコミを通じて訴え続けていた。

「韓国が勝つためには呉昇桓は不可欠である」と。世論の反発は覚悟の上だった。それでも、金寅植は呉昇桓にこだわった。

 そして1月11日のコーチ会議の席で、メジャーの主力打者たちの参加辞退を受け、金寅植は決断した。予想通り、多くのメディアが非難の論調で報じた。

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