批判を覚悟でオ・スンファンをWBCに選んだ韓国代表監督のイバラ道 (2ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Getty Images

 そんな環境下でWBCやプレミア12を指揮してきた金寅植は、「国民監督」なる称号を受けるようになった。WBCは、2009年の第2回大会で日本と激しい戦いを演じた。2015年にはプレミア12で優勝に導いた。

 なぜ金寅植は代表監督としての才覚に長けているのか。20年にわたる国際大会のコーチ、監督としての経験の裏打ちがあることはもちろんだ。しかし、その上で言えることは、国際大会の戦い方を熟知している点にある。そしてそれを実行できる決断力を持っている。あえていえば、その2点に尽きる。

 例えば選手選考。彼は国内での活躍、成績は参考にはするが、重要な選考材料とは思っていない。「あくまでも海外のチームに通用する選手かどうか」を最優先する。それも「アメリカ戦専用の中継ぎ」や「日本は左腕を苦手としている」など、じつに具体的なのだ。そうした対戦イメージを根拠に、合致するタイプの選手を選ぶ。そしてその選手も「今大会では使えない」と判断すれば、実戦ではアッサリと外すし、使えると踏めば躊躇せずにつぎ込む。

 だが百戦錬磨の金寅植も、今回はかつてないほど悩んでいるようだ。エースの金廣鉉(キム・ガンヒョン)がトミー・ジョン手術のため参加を辞退。頼りにしていたメジャーの打者たちも球団の意向でほとんど参加ができなくなった。金寅植の脳裏で、勝利へのピースがはまらない。

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