門田博光の野球ロマン。
「筒香も大谷も、ホームランに恋をしろ!」

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by AFLO/Okazawa Tatsuro

 門田はバッティングを語る上で、3つのスイングが重要になると言う。まず、腕が伸びたベストなポイントで捉えるスイング。次に、差し込まれ気味に腕をたたんで持っていくスイング。最後に、崩されながらもヘッドを効かせて運ぶスイング。この3つを持っていないといけないと語る。そして大谷には無限の可能性を感じるという。

 だが直後、門田は寂しそうにつぶやいた。

「大谷もあと1年で向こう(アメリカ)やろ」

 はたしてこの先、日本球界に門田のお眼鏡にかなうような本物の長距離砲が育つ時代はやってくるのだろうか。

「10回で3回のヒットより、12~13回に1本のホームランを喜べるか。そこまで苦しまんでも福沢諭吉がガッポリ入ってくる時代。年俸2億円が普通になってきて、ちょっといけば4、5億円の時代に、そこまで苦しむことができるのか。高騰する年俸が技術向上を妨げているのはたしかやけど、そこを超えてくる"変わりもん"が出てくるかどうか。すべてはそこや」

 門田の話を聞きながら、いまの長距離砲に足りないものは"哲学"、もう少し平たく言えば"ロマン"だと思った。技術論や投手のレベル、球場の広さなどを語る以前に、グラウンドでどんな夢を見ることができるのか。真のアーチスト誕生のカギはここにあるのではないか、と。だからこそ、門田が「オレなんかよりはるかに力を持っとる」という筒香や大谷らが"変わりもん"になった姿を見てみたいと......。ホームランに恋をした男の言葉に、そんな夢が膨らんだのだった。

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