門田博光の野球ロマン。「筒香も大谷も、ホームランに恋をしろ!」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by AFLO/Okazawa Tatsuro

「ホームランに恋して、本気で打ちたいと思えば、そのことばかり考えるようになる。オフは、体は動かんけど、頭の中はそのことばかり。重心をもう少しこう持っていったら飛距離はどうなるとか、下半身が二等辺三角形じゃライナーのままやから、もう少しこうしたらとか......。自分が"変わり者""頑固者"と思うくらい惚れ込む。そこまで恋できるかどうかや。惚れ込む女にはとことん惚れ込んで一生懸命になるでしょ。それと同じ。でも、いまの野球を見とったら、なにより、惚れ込むというのが難しいんやろうけどな」

 現役時代、門田はホームランの魅力に取り憑かれ、骨の髄まで惚れ込んだ。プロ1年目のキャンプで野村克也の打球に強い衝撃を受け、「あんな打球をオレも打ちたい」と強い衝動に駆られたことがきっかけだった。プロ生活を重ねていくうちに「アイツら(外国人選手)にも負けん打球でお客さんをうならせたい」という思いも膨らんだ。8年の歳月をかけ、1キロのバットを年間通して扱えるようになり、「すべての球場で場外ホームランを打つ」と挑んだこともあった。

「最初はみんな、恋をしてスタートするんですよ。子どもの頃の『ホームランを打ちたい』から始まって、プロの世界でもね......。すぐに壁にぶち当たっても、軽く破るヤツもおる。20本の壁くらいはまだ楽なんよ。だけど、30本の壁はちょっと手ごわい。そこで『これは苦しい』となり、諦めて『20本塁打、70打点、3割でええわ』と進路変更するんや」

 だが門田は進路変更することなく、ホームランにこだわり続けた。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る