門田博光の野球ロマン。「筒香も大谷も、ホームランに恋をしろ！」 (2ページ目)

　言葉が一気に熱を帯び、門田ワールドが広がっていく。

「ホームランというのは特別なんや。ホームランは集中力を極限まで高めてボールの芯を打ち抜かんと打てんのや。ちょっとでもミスショットしたら、人がおらんところに落ちても、スタンドには届かん。要するに、ワイワイ楽しくしゃべってやるということは、ヒットは打ててもホームランを打つ精神は出来上がらんというこっちゃ」

　打席で極限状態を作るためには、普段の生活やシーズン後の過ごし方など、すべてがつながってくると力を込めた。

　自身の現役時代の話になると、「毎日グラウンドに来ても、『おはようさん』と『お疲れさん』の二言だけで帰っとったわ」と笑う場面もあった。本来は饒舌で話好きの門田だが、無駄話をすると打席での集中力が途切れてしまうため、球場入り後はできる限り、人と話をすることを避けた。試合後も昂（たか）ぶった気持ちのまま帰宅し、「体を冷やすためには、あれが一番」と、夜中に水風呂へ飛び込むのが常だった。

「孤独を感じたあとにホームランを打てる心境が出来上がるんですよ」

　すぐに「いまの選手にはわからんわな」と言って、こう続けた。

「『なんでそこまで苦しまないといけないの？』『ヒットでいいじゃないですか？』『３割打ったらすごいですか？』という考えでくる選手に、ワシの理論は通用せんわ」

　技術の前に必要なことが精神であり、哲学であると門田は言う。その門田に「いまの選手でもホームランを打つ精神を持つことができるようになるか？」と向けると、「簡単や」と頷き、喫茶室に力のある声を響かせた。

「ホームランに恋したらええんや！」

　言葉はシンプルだが、簡単ではない答えだった。