元ホークス斉藤和巳が今だから話せる、復帰を目指した地獄の日々 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News 協力●寺崎江月

――まるで、穴を掘っては埋めさせる懲罰のようです。

斉藤 少しずつ少しずつ丁寧に積み上げたものが、ガラッと崩れる......。またイチから始めるのは精神的に厳しいものがあります。投手の場合、肩関節や下半身や体幹をしっかり使って投球したとき、決まって異変が出ます。そうしたらまた「イチから」......メンタルがもちません。一歩下がるくらいだったらまだしも、振り出しに戻るのは本当にしんどい。でも、地道にやるしかありません。

――リハビリ経験のある斉藤さんでもメンタルの維持は難しかったんですね。

斉藤 球団は全面的にバックアップしてくれている、支えてくれる人たちもいる。ファンが復帰を待ってくれているのも当然わかっています。それだけに......。振り出しに戻ったら、復帰までのスケジュールはまったくわからなくなってしまう。先が見えない状況は誰だってつらいと思います。

――斉藤さんはそのとき、何を目標にしたのですか。

斉藤 戦力として、一軍に戻ること。そこをずっと目指していました。ただ投げられるようになっただけでは意味がない。一軍で戦力になって、勝利に貢献したいと考えていました。

自分の可能性が見えなくなって引退を決意

――しかし、2013年7月29日。現役続行の断念を発表しました。事実上の引退宣言です。

斉藤 実は2013年の春には、試合で投げられるんじゃないかというところまでいき、バッティングピッチャーができる状態になっていました。肩はギリギリの状態ながら、「ここを乗り越えれば」という手応えもあった。でも、バッティングピッチャーをした後、2、3日たっても疲労がとれない。肩の状態がよくならない。毎日毎日、治療しながらトレーニングを続けましたが......。

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