「毎晩、高い所から落ちる夢を見た」。斉藤和巳が語るリハビリの6年間 (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News 協力●寺崎江月


──痛みは感じましたか。

斉藤 24時間ずっと痛みがあって、じっとしていることさえつらい。野球どころじゃないというのが、そのときの正直な気持ちですね。日常生活が苦痛でした。

──食事はできたのですか。

斉藤 過去の経験があるので、それは大丈夫でした。左手で箸もスプーンもうまく使えますから。でも、あの3カ月のしんどさは忘れられません。時々、外出することもあったのですが、歩くのが怖い。自分の右側に人がいることに恐怖心があるんです。

──肩以外を鍛えるトレーニングはできましたか。

斉藤 まったく無理です。ちょっとした振動でも肩に痛みが走るので、おじいちゃん、おばあちゃんがしているくらいのリハビリメニューしかできない。痛み止めの薬が強くて、起き上がれないこともあって、リハビリの先生に来てもらっても、僕はボーッとしていた。頭は痛いし、吐きそうだし、食事の量も減って、体重がどんどん落ちていきました。

──そんな生活が長く続いたのですか。

斉藤 術後3カ月で退院したのですが、退院後も3カ月ほどはそんな感じでした。「さあ、トレーニングをやるぞ」とはなりません。睡眠も十分にとれず、毎日、高いところから落ちる夢とか、誰かに追いかけられる夢ばかり。それだけ不安だったんでしょうね。あまりに嫌な夢ばかり見るので、寝るのが怖くなりました。

(後編につづく)

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