創価大の恩師が見続けた
「田中正義と池田隆英のライバル秘話」

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 そう高校時代のふたりを振り返ったのは、創価大学の岸雅史監督だ。当時、創価高のエースとして投げていたのが、池田隆英(楽天2位指名)だった。コンスタントに140キロ台をマークしながら、変化球のコントロールも安定していて、高校生らしくないどっしりとしたピッチングのできる投手だった。

 以前より、話す表情がおだやかになったように見えるのは、こっちの勝手な先入観なのか。岸監督は言う。

「たしかにホッとしたという気持ちはありますよ。ほんと、"ふたりの逸材"を預かったわけだからね。特に、正義の方はブレイクしたのが早かったでしょ」

 田中正義、大学2年の春。創価大にすごいボールを投げるピッチャーが出てきたと、ネット裏が騒然となった。相手チームは点を取れないどころか、ヒットも打てない。ただその投手が、あの夏、センターを守っていた選手とはまるで結びつかなかった。

「その後の大学選手権がもっとすごかった。立て続けに150キロをマークするし、フォークも130キロ台後半だったかな。打たれる気がしなかったもんね。だから僕は正義に言いましたよ。『お前はもう、創価大学のみならず大学球界の宝なんだよ』って」

 今だからこそ笑いながら話せる"後日談"も、そんな大器を預かることになってしまった当時のプレッシャーの大きさは容易に想像がつく。

「池田にしても、大学入学当初は歩くのも不自由な状態でしたからねぇ」

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