元メジャースカウトが危惧する大谷翔平「30歳のピッチング」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 日本とアメリカでは、育成に対する考え方がまったく違う。メジャーの下に3Aがあり、2A、1A、ルーキーリーグと5つのクラスがあるアメリカでは、実力よりも年齢で選手を振り分ける。どれほどすごいボールを投げていても、メジャーで戦力になるとわかっていても、体ができていないうちから投げさせるわけにはいかないという考え方が徹底されているからだ。メジャーのシステムを幼稚園、小学校、中学校、高校、プロと5つのクラスになぞらえるならば、幼稚園児がプロに飛ぶことはあり得ない。ただ、中学生が高校を飛び越してプロになる飛び級は用意されている。それがメジャーの育成プログラムである。小島が続ける。

「僕が高校1年の大谷くんにイメージしたのは世界一のピッチャーです。あのときの彼の右腕の柔らかい使い方は、ため息が出るほど美しかった。まさにドワイト・グッデン(メッツに入団し、19歳でメジャーデビューを果たした元祖ドクターK)でしたから......鷲のように大きく羽を広げて、そのままどこかへ飛んでいっちゃうんじゃないかと思ったほどです(笑)。もし高校からそのままアメリカへ行っていたら、25歳で10年総額300億円の契約を結ぶことができただろうし、サイ・ヤング賞を何度も獲るようなピッチャーになれたと思っています。もちろん今の大谷くんでも、25歳でメジャーへ行けばそのくらいの契約を勝ち取れる可能性はある。でも僕には、今の大谷くんが30歳になってもメジャーのローテーションのど真ん中にいるイメージが作れないんです」

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