柳裕也をドラフト1位まで大きくした、
明大4年間の「人間力野球」

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Kyodo News

 柳の球種は、カーブとチェンジアップ、そしてカットボールだ。なかでも武器は、ストレートと変わらない腕の振りからブレーキを利かせて鋭く落ちるカーブだろう。

「高校時代もカーブを投げていましたが、どちらかというと緩急をつけるのが目的でした。今のカーブは、腕を強く振ることと、スピンを強く、たくさんかけることを心掛けています。抜こうとしたら腕は強く振れない。誰かに教わったというよりは、自分で試行錯誤しながらたどり着きました。三振を取ることが増えたのも、カーブを使って追い込めるようになったことが大きいと思います」

 入団する中日は昨季、セ・リーグの最下位に終わり、柳は即戦力として1年目からの活躍が期待される。

「勝てるピッチャーになりたいです。チームを勝たせられるピッチャーに......。そのためには、投げること以外のフィールディングやけん制も大事だと思います。攻撃は守備からリズムを作るものだと考えていて、投手である自分が逆球ばかり投げていたら、野手もリズムに乗れないし、次の攻撃にうまく入っていけない。そういう意識を常に持っていたい」

 柳が中日に指名された日、柳を個人的に応援していた筆者に、あるスカウトがわざわざメッセージを送ってくれた。

「(柳は)素晴らしい投手。活躍して、世の中にメッセージを送ることができる人物です」

 ちなみにそのスカウトは、柳を指名した球団のスカウトではないが、柳と接した人々は、彼の優しい人柄、明治流にいえば"人間力"(明大を37年にわたって指揮した島岡吉郎元監督は、人間力野球を標榜した)に魅了される。

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