広島の名スカウトが惚れ込んだ男・
加藤拓也は「ポスト黒田」となれるか

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 しかし、加藤は筋力トレーニングについて「自分のポテンシャルを上げるための作業」と必要性を力説する。事実、加藤は大学で本格的に筋力アップに取り組んだ結果、ドラフト1位指名されるほどの投手になった。

「もともと慶應大に憧れて慶應高校に入ったのですが、大学では『1試合は神宮で投げたい』『最後までやり抜こう』という目標しかありませんでした。実際に入ってみると、周りには白村(明弘/日本ハム)さん、山形(晃平/日本生命)さん、山田(貴大/東邦ガス)さん、明(大貴)さんと、右の速球派がたくさんいたんです。ただ速いだけじゃなくて、背の高い人もいればバネのある人もいる。それで『僕、全然投げられないな』と悟ったんです。上背もなく、バネもなく、器用でもない僕は、他の人と違うところで勝負するしかない。それで筋力を上げようと思ったんです」

 上半身に筋肉をつけることを嫌う投手はいるが、加藤は全身バランスよく筋力をつけることにこだわった。そしてただ筋力をつけるだけでなく、並行して投球フォームも変えていった。加藤は独特な表現でその過程を語った。

「僕はポテンシャルが縦軸、技術が横軸だと思っているんです。ポテンシャルとはスピードとかパワーですが、これはトレーニングで上げることができる。でもそのポテンシャルを引き出すには技術が必要です。ウエイトトレーニングをしながら、フォームを変えながら、だんだんよくなっていきました」

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