元Aクラス請負人・久本祐一が目指す「現役選手みたいな打撃投手」 (5ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • 祐實知明●撮影 photo by Sukezane Tomoaki

── 久本さんご自身は、カープに移籍した2013年は先発と中継ぎで43試合に登板するなど、フル回転の活躍でした。しかし、その反動なのか、翌2014年には大きな故障をしてしまいます。肘のケガはこのときが2回目でしたね。

久本 1回目は2009年。二軍の広島戦のときで、やった瞬間は「ブチッ! ボキッ!」みたいな感じで、そりゃもう痛かったです。靭帯も筋肉も切れましたからね。2回目は交流戦明けの一軍マウンド、DeNA戦で1球投げたところでやってしまいました。ちょうど交流戦でチームがガクッと失速した時期に、たまたま僕だけ調子がよくて、チームのためならどんどん使ってくれと思ってやっていたら......。これはまた手術室行きだと思って、思わずその場にうずくまりましたよ」

── 手術はやっぱり痛いのですか?

久本 痛いですよ。最初のときは手術台で叫びましたから。あの痛さは死んでもいいという気持ちになりました......。2回目はまだ大丈夫なほうでしたけど。

── 手術やリハビリのときは、どうやって自分と向き合っていたのですか。

久本 第一には戦力に返り咲くという強い気持ちを持ち続けることです。そして、傷んだ箇所をとことん知ることですね。ボールを投げていて、ある部位が張ることがあったりしますよね。そのとき、試しに違う部位を揉むと違和感がなくなったりしました。とにもかくにも医師に聞いたり、インターネット等で情報をたくさん仕入れたりして自分で試すしかないです。

 トライアウトもそうですけど、手術も自分が実際に受けてみて初めてその気持ちがわかるし、将来指導者になることがあれば、この経験を話せるかなと。トータルしてみれば、僕はそんなにいい成績を残したわけじゃないですけど、そういったさまざまな経験をしたことによって人間として、野球人としてすごく成長できたかなと思います。

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