戦力外→打撃投手の久本祐一が語る「落合GMから直電」の深い意味 (4ページ目)

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu


── 落合GMとの接し方は、やはり他の人とは少し違うのでしょうか?

久本 こちらがプロ意識を高く持っていないと、あの人とはしゃべれません。ひと言ひと言をちゃんと聞いて、落合さんの"だからこうなんだろ"というのをこちらが察しないといけませんから。そのひと言がヒントになって、練習のやり方も変わるし、その練習をすることによって野球も上達していくという感じです。うーん、なんだろう、例えば車の運転がうまい人は、ひとつ先を読みながら、リズミカルに停まったり曲がったりするじゃないですか。落合さんの言葉も、そんな感じがするんですよね」

── 中日監督時代の落合GMについて、印象的だったグラウンドでのエピソードを教えてください。

久本 監督に就任された1年目にドラゴンズが優勝したんですけど、そのときは勝っても負けてもホームで胴上げができる試合でした。ナゴヤドームでの広島戦、同点で9回ノーアウト1・2塁の場面。そこで僕が登板したんですが、ノーアウト満塁にしてしまい、次打者の緒方さん(現・広島監督)に満塁ホームランを打たれてしまった。落合監督就任1年目の記念すべき優勝を、勝利で飾ることができなかったんです。

── 優勝したとはいえ、ちょっと気まずい結末ですね。

久本 もう、ファンにも申し訳ない。みんな、勝って気持ちよく優勝したかったわけですから。もちろん、優勝は優勝なので周りはお祭り状態でしたが、僕だけは悔しくてたまらない1日でした。しかも、それ以来、キャッチボールから感覚がおかしくなってしまい、心の痛みがパフォーマンスにも出るようになってしまった。せっかくリーグ優勝したのに、日本シリーズのベンチからも外されました。当然です。ボールの投げ方さえ、わからなくなってきたんですから。

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