2017新人王にロッテ1位・佐々木千隼が
最有力である2つの根拠

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 今年6月に行なわれた大学日本代表選考合宿でのこと。この合宿では、直前の大学選手権で中京学院大を初出場初優勝に導いた吉川尚輝(巨人1位)が注目を浴びていた。そんな吉川とシート打撃で対戦した佐々木は、148キロの迫力満点のストレートで空振り三振を奪っている。登板後、佐々木ははっきりと「吉川くんは意識していました。テレビで見て、いいバッターだなと」と口にした。

 強敵を前にすると、自然とアドレナリンが出て最高のパフォーマンスを発揮する。そんな「雑草育ち」も、日本ハムやソフトバンクといった強敵に立ち向かうロッテという球団のカラーによく合いそうだ。

 心配があるとすれば、秋の明治神宮大会の悪い状態を引きずってしまうことだろう。特にシンカーに頼っていた感があり、シンカーを曲げようとすればするほど体の開きが早くなり、ストレートが走らない悪循環に陥っていた。

 しかし、それも杞憂かもしれない。最後の最後、大学ラスト登板となった明治神宮大会の決勝・明治大戦で、佐々木は珍しく大崩れを見せた。4回まで無失点と踏ん張っていたが、5回に一挙4失点。今年1年通して、めったに見られなかった1イニングの大量失点だった。

 試合後、佐々木は涙を拭いながら「まだまだ実力が足りなかった」と言葉少なに語っている。新興チームを全国準優勝に導いた達成感など微塵も感じさせず、ただただ「負けて悔しい」という感情だけが伝わってきた。

 反骨の男・佐々木千隼は、2017年のキャンプインまでに、もう一段スケールアップして現れるのではないか......。その予感が現実になったとき、「2017年新人王」の座もより現実感を伴って近づいてくるはずだ。

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