なぜそこに? 元セ・リーグ新人王・上園啓史が語る、オランダ野球事情 (6ページ目)

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 そうした環境のなか、上園は週3試合と1日の練習をこなし、たっぷりある野球以外の時間は、英語の勉強をしていた。

「向こうの人は英語がペラペラなんです。ホームステイ先のホストファミリーも英語でしたし。僕は、現役時代から外国人選手と話すのが好きでした。英語を覚えたら、今後のためにもなりますし。オランダ語ですか? そっちは勉強しませんでした。今後の役に立つことはないと思いましたので。あと、チームはベルギーとの国境近くの町にあったので、コーチにベルギーを案内してもらったりしました」

 考えれば、プロ野球選手になるような「選ばれし者」は、少年の頃から野球一筋に育った人間がほとんどだ。現役引退後、野球の仕事に携われるのはほんのひと握りだけで、路頭に迷う選手も少なくない。そんななか、上園が経験した"旅"は、アスリートにとって極めて大事な充電期間だったのかもしれない。

 最後に、この"旅"について、彼自身の言葉で表現してもらった。しばらく困ったような表情で沈黙したあと、こう語った。

「人生をゆっくり考える時間......ですかね」

 上園は、来季からBCリーグに新規参入する滋賀ユナイテッドベースボールクラブの監督として、新たな人生のスタートを切る。

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