なぜそこに? 元セ・リーグ新人王・
上園啓史が語る、オランダ野球事情

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 それでも上園のなかでは、野球はオランダでの生活の一部でしかなかった。日本でプレーしているときと違い、週3回の試合と1回の練習以外は特に体も動かさなかったという。

「毎日プレーする気持ちでもなかったですし、実際できるような体の状態ではありませんでした」

 オランダの野球事情について、上園はこう語る。

「上と下との差が激しいっていうのは感じました。僕が在籍していたのは、2部から上がってきたチームなんですけど、ホントにクラブチームっていう感じで......。日本だと普通の高校生レベルのようなピッチャーが投げることもありました。だから僕自身も、成績はいいに越したことはないですけど、チームに迷惑がかからないように貢献できればいいかなっていう程度でした。とにかく2部に落とさなければいいかな、と」

 上園自身、月給は12万円程度と語っていたが、前述したように無給の選手もいたという。オランダでプレーする選手たちの"お金の事情"はどんなものなのだろうか。

「トップチームのキュラソー・ネプチューンズとアムステルダム・パイレーツはそれなりにしっかりしていて、多くの選手が報酬をもらっています。選手の報酬はそれまでの経験で決まり、たとえばアメリカの3 Aでやっていた選手は、野球だけで食べていけます。そのくらいの選手になると、チーム以外に野球協会からナショナルチームの選手として報酬が出るんです。楽天にいたルーク・ファンミルが現在、オランダナンバーワン投手です。彼で月給は50万円ぐらいもらえるらしいです。自分で『オレよりもらっているヤツはいない』って言っていたので、間違いないと思います。でも、野球だけで食べていける選手は、代表チームのメンバーでも一部だけです。若い選手は月7万円ぐらいしかもらえませんから」

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