なぜそこに? 元セ・リーグ新人王・
上園啓史が語る、オランダ野球事情

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 日本のトライアウトで声がかからず、その後メジャー球団が実施したトライアウトにも参加したが、獲得を示す球団は出てこなかった。32歳。野球をあきらめるにはまだ早いかもしれないが、上園の心はすでに「次」の方向を向いていた。

「そもそもトライアウトも自分のなかで区切りをつけるために行ったようなものでしたから......」

 その後、上園はオーストラリアに渡り、プロリーグのシドニー・ブルーソックスに合流した。しかし、これも現役続行を見据えたものではなかった。

「現役を続けるつもりなら、アメリカに行っていますよ」

 そう言いながらも、上園は5試合だけの登板だったが、防御率1.93と圧倒的な数字を残した。そして上園は、「オーストラリアで野球の楽しさをあらためて感じた」と言う。日本とは違う、新たな国での野球に魅力を感じたのだろうか。しかし、「そうではない」と上園は否定した。

「オーストラリアにしても、オランダにしても緩い感じです。これが海外かなって。集まったらアップをして、キャッチボールをして、バッティングをして......。その間、ピッチャーはボール拾い。あとは投内連携をやったり。ノックもやるときはやって、やらないときはバッティングだけ。メジャーリーグと一緒だと思いますよ。ただ、メジャーリーガーほど実力がないので、だらけているように見えますけど(笑)。でも、違和感はなかったですよ。だって、海外ってそんなもんでしょ。特にオランダは、ほとんどの選手が無給で、ほかに仕事を持っていますから。野球が仕事じゃない時点で『しっかりしろ!』というのも違うような気がします」

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