ドラフト「強行指名」はなぜ起きるのか。履正社・山口のケースを追う (5ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 このように、条件を出している選手に対して、その条件から外れるなかであえて指名するケースについて、A氏とは別な球団のスカウトB氏はこう話す。

「どうしてもこの会社(学校)、この監督ともめたくないということになると、プロ側もそこまでリスクは冒さないでしょう。進む先、所属チーム関係者との関係、感触、そこに本人の意思も含め、可能性があると思ったときに指名します。今回の日本ハムは可能性を感じたということでしょう」

 また、別のスカウトC氏は「これを認めたら、また逆指名の流れにつながっていく恐れがある」と危惧する。たしかに、それぞれが「●位以上なら入団」や「●●球団以外なら拒否」などと希望を挙げるようになったらドラフト制度はどうなるのか。

 昔に比べ、指名拒否の選手は極端に減った。これは、選手側から前もって条件が伝えられ、それに合わなければ指名しないという球団が増えたことが挙げられる。

「社会人の名門チームなどは、指名順位や契約金はいくら以上ということも言ってきます。個人的には、志望届を出した選手は、順位や球団などの条件なしでプロへ行くようになれば、いちばんスムーズだと思います」(スカウトB氏)

 ほかにも様々な意見があり、別な球団のスカウトD氏はこう話す。

「今回、担当スカウトはつらいだろうと思いますよ。山口に関しては、JR東日本からの指名順位の縛りはなかったはずですが、担当スカウトは履正社との関係がある。4位以下では難しいと伝えていたと思いますが、上の判断で指名となったんじゃないかな」

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