2016.11.06

貫いた美学。黒田博樹がチームメイトに
伝えた最後のメッセージ

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 勝負の世界で生き抜くために、グラウンド上でいつも紳士だったわけじゃない。米メジャーリーグ時代にも08年のフィリーズ戦では一塁ベース付近で言い争いをし、乱闘騒ぎ寸前となった。またヤンキース時代にも審判の不要な一言に怒りを露わにしたこともある。

 昨季から復帰した日本での2年でも、黒田はスマートに野球をしようとはしなかった。昨季は黒田がバントの構えをしているにもかかわらず、若い阪神・藤浪晋太郎が胸元の厳しいコースへ投げ続けたことで激高。今季は優勝を決めた巨人戦でマイルズ・マイコラスが死球を与えた安部友裕に向かっていく姿勢にベンチ前からジェスチャーを交えて猛抗議した。

 審判に対しても、ストライクと思った球をボールと判定されれば納得のいかない表情を隠そうとはしない。それも審判との駆け引きだった。すべての組み立てに意図のある黒田にとって、誤った判定を簡単に受け入れることはできない。当然、次回以降の布石ともなる。

 広島に入団してから、どうすれば勝てるのか、常に考えてきた。04年、2年連続で開幕投手を任されながら8失点し、5点の援護点を無駄にした夜、関係者との食事の席で涙した。黒田を知る者はみな、「野球のことばかり考えていた」と言う。「有言実行であり、不言実行でもあった」。海を渡っても、不惑を迎えても、スタイルを最後まで貫き通した。

「本当、出来過ぎの野球人生。最後にリーグ優勝もできたので、満足できる野球人生だった。間違いなくカープに入っていなかったら、これだけの野球人生を送れなかった」