高校時代に放った大ファウルに西川遥輝のスラッガーの資質を見た (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 残念ながら最後はポール上部のわずか右を通過。あと数メートル左ならライトスタンド中段に飛び込んだであろう大ファウル。この見た目にして、この打球。しかも1年生。一瞬で西川の虜(とりこ)になった私の頭に浮かんできたのがイチローだった。

 オリックスの1年目、西川同様、こちらも華奢で色白の鈴木一朗が、フレッシュオールスターで東京ドームのライト中段に放った一発。その時感じたインパクトが西川の打球に重なったのだ。

 この一打について、西川とも話したことがあった。時間が過ぎても本人ははっきりと覚えていた。

「あのファウルはたしかに飛びましたよね。(打球は)なかなか切れなかったし、自分としてもいい感じの打球だったことは間違いないです」

 しかし、1年春の大会で4本放ったホームランも、高校通算は13本止まり。好打者としての資質は随所で発揮したが、イチローを思い浮かばせたような打球は影を潜めた。西川の高校時代には常にケガがついて回った。

 そもそも1年夏も右手の有鈎骨(ゆうこうこつ/手のひらの下の手首に近い部分にある骨)を骨折していた。智弁和歌山に代々伝わる150キロ超えのマシン打撃による衝撃もあったのか、県大会中に骨折が判明。患部をテーピングで固め、甲子園では2回戦からの強行出場だった。「しっかり守って、打席ではフォアボールを選んで、走ってくれたらいい」との高嶋監督の意向で、「9番・サード」での出場だった。

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