主演・大谷翔平の起用に見る演出家・栗山監督「日本一へのシナリオ」 (6ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 第2戦では、2−2の同点で迎えた6回裏、ワンアウト2塁で迎えた3番の大谷を敬遠した。バッターの大谷を過度に警戒した結果、中田が勝ち越しのタイムリーを放ち、陽岱鋼のタイムリーで歩かせた大谷をも生還させてしまった。今シーズン、リーグ制覇を成し遂げたのはファイターズだったとはいえ、最近の5年間で3度の日本一に輝き、ポストシーズン3連覇を目指していたディフェンディングチャンピオンがホークスだったはずだ。そのホークスが大谷を恐れるがあまり、王道の野球を見失っていた。それが逆に大谷を、敵にも味方にも大きく見せてしまったような気がしてならない。

 思えば4年前、監督1年目にいきなりリーグ制覇を成し遂げて日本シリーズを戦っていた栗山監督は、自宅を出る際、空を舞う雪虫の群れに出逢った。

「もうホントにいっぱい、雪が舞い散るように、パーッとね。これをつかんだら白星をくれるのかもしれないなと思って、雪虫を掌に載せたりしたよ(笑)」

 4年前は日本一を逃したファイターズ。栗山監督は日本シリーズという舞台を「忘れ物を取りに行く場所」だと表現した。勝負のシーズンと位置づけた指揮官の今年の戦略はすべて、日本一からの逆算によって組み立てられていたものだ。そして、その挑戦権は得た。頂点を見据えてきた栗山英樹の日本シリーズへの備えは、もうとっくに終わっている──

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