主演・大谷翔平の起用に見る
演出家・栗山監督「日本一へのシナリオ」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

「どっちにしても中4日で(第6戦には)行かせようとは思っていたしね。今年に関しては最後の最後、一発だけは無理がきくと思って、そのために夏場、(2カ月のピッチャー封印をして)間をあけながらやってきた。そう思ってたら(5回を終わって3点差がついて)最後、翔平でアガリやすい状況ができた。ふと見たら、珍しくアイツがこっちを見てたんだ。そんなこと、初めてだよ。いつもは知らん顔してるのにこっちを見て、『行きますよ、僕、行けますよ、チームのために勝ちましょうよ』って。オレにはわかるんだよ。ああやって選手たちが必死になってるところへ乗ってくる大谷翔平の野球少年的な心が......そこをこっちは一番、信頼してるわけだからね」

 中3日も、DHからの登板も、確かに初めてだった。しかし、それは決して思いつきで無茶をさせたわけではない。栗山監督は今シーズン、ずっと大谷にさまざまな宿題を課して、ひとつずつ、課題をクリアさせてきた。交流戦が始まる直前、大谷が先発する日に初めてDHを解除して彼を打線の中に組み込んだ。すると大谷はピッチャーとして7回を1点に抑える好投を見せながら、バッターとして3安打を叩き出した。

 7月に"1番、ピッチャー"という役割を与えると、大谷は先頭打者ホームランを打って監督の期待に応えた。このCSでも登板翌日の第2戦、中0日で初めてバッターとしてスターティングラインアップにその名を書き込んだ。アイディアあふれる演出家と才能あふれる役者がそろって初めて、感動のドラマが生まれる──今の栗山監督と大谷は、まさにそんな関係に置き換えることができる。大谷は言った。

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