主演・大谷翔平の起用に見る演出家・栗山監督「日本一へのシナリオ」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

「こっちは、今日は打ち合いになると読んでいたから、とにかく点を取りにいかなきゃいけない。そのためにどういう布陣がいいのか。オレは早いとは思ってないんだけど、4回が早いというならその早い4回で(大野)奨太に代打を出せたのも、ピッチャーを足さずにキャッチャーを3人にしていたからでしょ。それにしても岡がよく打ったよね」

 バースがホークスに追加点を与えないピッチングをしている間、代打の岡が同点打を放って、中島卓也がスクイズのサインに応え、ファイターズは4回、5−4と逆転に成功。バースが5回表をゼロに抑えると、その裏、ファイターズは大谷、中田翔、近藤健介のクリーンアップの3連打でさらに2点を追加した。5回を終わって7−4とファイターズがホークスを突き放し、リードを3点に広げる。

 そのとき、ベンチの指揮官は、とっておきの引き出しを開けていた。

 あと4イニング、このリードをどう守るのか。まずは6回、7回を谷元圭介に託すとして、残りの2イニングをどうするか。栗山監督の頭に浮かぶ、禁断の果実──それがDH大谷の中3日でのピッチャー起用だった。

 過去、栗山監督が繰り出してきたさまざまな禁じ手は、一見、そう見えても、どこかで予行演習なり、心の準備がなされてきた。もしこの試合で大谷をマウンドに送り出すとなると、栗山監督は大谷に、ふたつ、初めての経験をさせることになる。

 ひとつはこれまで中4日の経験もさせたことがないのに、中3日のマウンドを踏ませるということ。もうひとつは、DHの大谷にピッチャーをさせるということ。どちらも過去、テストはしていない。それでも栗山監督は自らのセンサーに委ねた結果、今の大谷の状態なら行けると判断し、8回からの大谷投入を決意して、まず大谷の心を確かめようとした。

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