ホークスを二刀流で圧倒。大谷翔平が体現する「非常識な常識」 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 ムキにならず、適当に力を抜きながら、ここ一番では決めに行く。そのメリハリは今年、体を強く、大きくしたからこそ可能になった。大谷はその意図をこう説明している。

「力がつくと豪快な感じになると思うかもしれませんけど、僕は逆の発想なんです。今までなら、ブレながらでも反動をつけて120%をフルに出して160キロだったのに、力がつけば、コンパクトに投げても160キロが投げられる。精度も高くなるんです」

 めいっぱいアクセルを踏んで出した160キロと、軽くアクセルを踏んでも出る160キロとでは、精度がまったく違ってくる。力感なく、ムキにならなくとも、前に飛ばないストレートを投げられるようになったのは、排気量の違いがもたらしてくれた。今年のその底上げが、大谷のストレートをこれほどまでに変貌させたのだ。

 投げて、打って、走って、勝つことさえも当たり前だという空気――大谷はこの1年で周囲の見る目をガラッと変えた。1年前にはあり得なかったDHを外しての「〇番、ピッチャー、大谷」も、誰もが当たり前のこととして受け入れるようになった。栗山英樹監督が試合前の報道陣の問いかけに対して「今日は投げることに集中してもらう形を考えた」と言えば、「ああ、今日は誰かにDHを託して大谷はピッチャーに専念するんだな」と報道陣の誰もが思い込んでいたのだが、今では「投げることに集中するっていうのは、ピッチャー専念ではなくて打線の中に入るってことなのかな」とイメージするまでになっている。そして大谷は、ピッチャーとして打線の中に入ることについて、こう言ってのけた。

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