「手負いのラッキーボーイ」今宮健太がCSファイナルで波乱を起こす (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 シーズン終盤、慢性的に痛みを抱えていた右ヒジがついに悲鳴を上げた。9月27日のロッテ戦(QVCマリン)の試合前には、チームを離れて福岡に戻るほどだった。当時の状態をチームトレーナーが説明する。

「その日、痛みが急激に強まって右ヒジがロックした状態になってしまった。伸びないし、曲がらない。いわゆる"ネズミ"というやつですが、今回の場合は炎症がひどくなってしまったのでしょう」

 こうした場合、ロックがかかってしまうと、ほとんどはそのまま痛みは引かずに手術に至るという。今宮はまさにそれだった。

「オレ、出られるんかな......」

 CS欠場も何度も頭をよぎった。何とかグラウンドに戻ってきた今宮を見たそのトレーナーは「本人の懸命な治療とケアもありますが、ある意味、奇跡的でしたよ」と安堵の表情でそう話した。

 グラウンドに立ち続ける使命感は人一倍強い。ショートを守っている。それが大きい。

「年齢は若くとも、ショートは内野のリーダー。だから僕はチームを引っ張っていく立場だと思っています」

 さらに今宮の気持ちを奮い立たせたのは、9月28日の悔しさだ。リーグ3連覇を逃した夜、ひとりでその瞬間を知った。

「これまで優勝や日本一の瞬間に立ち会うことができた喜びもあったけど、Ⅴ逸のときにその場にいられなかったことの方が、自分のなかでは大きかった。本当にショックでした。シーズンの最後までグラウンドに立てなかったことも......」

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