巨人・田口麗斗を覚醒させた「ものすごい向上心」と「142勝左腕」 (3ページ目)

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「まだ全然、トレーニングをしないといけない年齢」と言うように、日々の練習メニューはほかの先発投手たちと比べるとハードで、肉体面の強化も怠っていない。その結果、強化すべきところに筋肉がつき、バランスがよくなった。

 たとえば、投げ終わりにピッチャーゴロが飛んできて、以前なら反応できなかった打球がさばけるようになった。これもフォームが安定してきたからこそ。体調面の波が少なくなり、フォームも固まってきたから、疲労も少なくなった。

「長いイニングを投げられるようになってきた。ひとつ段階が上がったのかなというのはある」

 変わったのは体だけではない。頭のなかも、以前に比べて成熟してきた。「昨年は投げることで精一杯だったけど、それでは年間を通してやっていけない」と、配球のことを考える機会がグッと増えた。

 苦い経験がある。6月28日の中日戦の4回、ランナーふたりを置いた場面で福田永将に初球をレフトスタンドに運ばれた。捕手の實松一成は高めのボール球を要求していたが、田口の投げた球はストライクゾーンの高め。まさにうってつけのホームランボールになってしまった。翌日、練習中に實松のもとに歩み寄り、ふたりでじっくりと話し合った。

「ただただ、がむしゃらに投げていた試合だった。反省を込めて、直さなければいけない」

 もちろん、正捕手の小林誠司とは密に意見を交わし、降板後はベンチで實松の横に座り、疑問に思ったことはすぐに聞く。また、いまは一塁を守っているが、長年、扇の要を務めていた阿部慎之助にも教えを仰ぐなど、貪欲な姿勢を見せている。

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