巨人・田口麗斗を覚醒させた「ものすごい向上心」と「142勝左腕」 (2ページ目)

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 田口にとって幸運だったのは、身近に最高のお手本がいたことだろう。球界を代表する左腕の杉内俊哉だ。杉内も小柄な体ながら、力感のないフォームからストレートで空振りを奪い、三振を積み重ねてきた。

「試合でのピッチングもそうですけど、キャッチボールもほかの選手と比べると独特なやり方でされている」

 全身の力を抜いて山なりの球を投げたかと思えば、次はビュッと投げる。柔と剛を織り交ぜながら投げる姿に、「フォームを確立する上で、そういうやり方もあるんだというところもあった。何度かマネしたこともあります」と、練習中から先輩左腕を目で追い、参考にし、盗んできた。

 そうして磨いてきた技術をコンスタントに出せるように体調面を整えたことが、今季の躍進の大きな要因だ。夏場を迎えてもパフォーマンスが低下することはなく、「元気な状態が続いているのがいちばん。コンディショニングがしっかりできているというのが、自分のなかにあります」と手応えを口にした。

 シーズン前から、1年間先発を守り抜くことを目標に置き、自らを律してきた。大事にしたのは、基本の部分。「スポーツ選手として必要なこと」と、質のいい睡眠、バランスのいい食事、十分な休養を心掛けてきた。

 特に気を遣ったのが食事面。食べたものを携帯の写真に撮り、トレーニングコーチに送って助言をもらっている。「昨年もやらなきゃいけないと思っていたけど、なかなか取り組むことができなかった。ここ最近、できるようになってきた」と、ローテーションピッチャーとしての自覚が習慣を変えた。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る