日米通算2000本安打の福留孝介が語る「忘れられない1本」

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

―― 今までの野球人生で、練習に妥協してしまったり、してしまいそうになったことはないですか。

「いや、ないですねぇ」

―― そう言い切れるからこそ、2000本も打てたのかなと思います。

「やっても、やらなくても、周りの人は誰も損しないし、得もしない。それは本人の考え方じゃないかな」

―― 中村豊コーチが「バッティングにしても守備にしても、若い選手には孝介を見習ってほしいけど、簡単に見習えるものじゃない。妥協しないこと、勝利への執念、1本打つことへの準備……あれは性格もあるから」とおっしゃっていました。

「いや、そんなことはないと思いますよ。じゃあ、僕が若いときにそこまで考えられたかと言ったら、そうじゃないかもしれないし。でも、誰でもその気持ちがあれば、できると思う。チャンスや運に恵まれるのもあるだろうけど、チャンスをつかんだと思った瞬間に離さないようにするっていうのは、考え方次第ですから」

―― 高校卒業のときも7球団からドラフト指名されました。交渉権を得た近鉄には行かず社会人へ進まれましたが、高卒でプロに入っていたらもっと早く2000本を達成できていたか、それとも打てていなかったか、どう思われますか。

「たぶん打ってないと思いますよ。わからないけど……。でも、僕は自分の通ってきた道は一切、間違いだと思わないし、それがなければ今はないと常に思っていますから。そのときにプロに来てたら、ひょっとして、もう辞めてるかもしれないでしょう」

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