まさかのDeNA防御率トップを支える、ルーキー戸柱恭孝の安定感 (3ページ目)

  • 山口愛愛●文 text by Yamaguchi Aiai
  • photo by ©YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

「キャッチングは練習で恐怖心を抱かせないことが大事。怖がったら、プレッシャーがかかったときに捕れない。谷繁(元信)も若いころは佐々木(主浩)のフォークが捕れなかったけど、キャッチングの練習をしてミットも動かなくなった。ミットから送球に持ち返るときのハンドリングが速くて、うまかったね」と話し、「スローイングが悪いときは、投げる手と前に出す足のタイミングが合ってないとき。そこを直せばだいぶよくなるから」と、キャッチャーを見る際の独自のポイントを挙げてくれた。その点に注意してみても、戸柱が確実に成長していることが見てとれる。

 DeNAのキャンプ中、毎日一番遅くまで残って練習していたのが捕手のキャッチングだった。戸柱、高城俊人、嶺井博希がホームベースに構え、近距離から光山英和コーチらがワンバウンドの強い球を投げていく。練習の初めに使うのは柔らかいテニスボールだ。これは「恐怖心を抱かせない」という権藤氏の考えと同じだろう。

 投じるときには「山口(俊)のワンシーム」「山﨑(康晃)のツーシーム」などと伝えることもあり、捕手たちはバウンドの距離や軌道に変化をつけたボールに食らいつき、身を挺して止める。20分以上繰り返してから、硬球に変わり、「もう一丁!」と声を上げながら、泥まみれの特守は続いた。

 戸柱は、構えてからキャッチするまでミットを動かさない谷繁のようなキャッチングを目指し、9m先のマシンから放たれるスピードボールを捕球する練習も続けていた。多いときは1日300球を捕球する。開幕してからも、毎日、高城とともに早出の特守は欠かさず、アザだらけになりながら「どんなボールでも捕手は後ろに逸らしてはいけない」と口元を引き締める。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る