不器用な男、ロッテ細谷圭がたどり着いた「11年目の打撃開眼」 (3ページ目)

  • 深海正●文 text by Fukami Tadashi
  • photo by Kyodo News

 春先の好調から一転、4月中旬以降は徐々に調子を崩し、なかなか快音を響かせることはできなかったが、前向きさを失うことは決してなかった。

「(調子の)いい、悪いは出てくる。状態が落ちたときに『どうしよう』というのを考えている」。疲れなどから起こる体のコンディション悪化が原因なのか、技術のズレが生じているのか。ティー打撃から丁寧に打ち返し、基本に戻り、原因を探っていた。

「いいときはそのままやればいい。悪くなったときに早く自分の中のOKラインまで持っていきたい。(対処法を)見つけようとしている。気持ちも、技術も、もっと考えれば、またひとつ引き出しが増える」

 冒頭の楽天戦は、代打逆転満塁弾の後も安打を重ね、3打数3安打。トンネルを抜け、再び上昇気流に乗るきっかけにするには最高の結果だった。

 群馬・太田商高からプロ入りし、11年目を迎えいる。打撃論にしても、考え方にしても、ようやく固まってきた。「周りからは遅いよ、と言われるかもしれない」と苦笑し、言葉をつなげた。

「自分がバカなだけ。早くできるなら、早くできた方がいいけど。不器用で、それが遅かっただけ」

 器用にはこなせないかもしれないが、愚直に目の前のことに取り組んできた。厳しい練習にも耐えてきた。ユニホームを着れば細身に映るが、体に無駄な脂肪はなく、分厚い筋肉で覆い尽くされている。

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