プロ11年目の再出発。村中恭兵は中継ぎで輝きを取り戻せるか? (2ページ目)

  • 町田利衣●文 text by Machida Rie
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「どうすればいいかわからなかった。ストライクが何で入らないのか、自分でわからない。気持ちの問題なのか、技術の問題なのか、体の問題なのか......」

 崩したフォームを取り戻すのは簡単なものではなかった。「自分の中である程度引き出しがあると思っていたが、それがまったく通用しなかった。本当にゼロに近い状態からスタートした」と振り返るように、野球人生で最大のスランプに陥(おちい)った。

 苦悩しながら「一番下までいったので、あとは上しかない」と自身に言い聞かせた。試合で投げられる状態ではない。ひたすら、フォーム固めの日々。全体練習後、ウエイト室の鏡でシャドーピッチング、室内練習場にこもってネットスローを繰り返した。

 正念場だった。8月、シーズンも佳境を迎えるころ、頭をよぎったのは「戦力外」の文字。その頃、転機が訪れた。「今は辞めてしまったヤクルトのある先輩から『お前は直球が生命線の投手。腕を振って投げろ』と電話をいただいたんです。そこで吹っ切れました」。

 さらに「辞めるなら自分らしく辞める。やってダメならあきらめがつく」と再スタートを切った。近くで見ていた石井弘寿二軍投手コーチは「自信を取り戻すために反復練習に取り組んでいた。実績のある投手でプライドもあっただろうが、若い選手も出てきた中で自分の立場を理解して、いい意味で開き直って取り組んでいた」と当時の様子を語る。

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