弟・良太が語る「偉大なる兄・新井貴浩の2000本安打の真実」

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • photo by Kyodo News

 タイガースを出る決断をしたときは、かなり悩んでいました。「どうしようかのう……」みたいなことは、僕の前でも言ってましたから。カープからFA移籍するときと比べて? それはわからないです。あのときは僕、何も知らなかったので。ドラゴンズに入ってまだ2年目で、自分のことで精いっぱいでしたし……。練習も試合もきつくて、ほとんど死んでたので、兄貴ともそんな密には連絡を取ってなかったんです。“涙の会見”の日もちょうどアジアシリーズに出ていて、僕はスタメンだったので、それどころじゃなかったです。

 カープから呼んでいただいていると聞いたとき、僕はタイガースで一緒にやりたかったですけど、兄貴は気持ちで動くタイプの人間なので、「好きにしたら」みたいな感じのことを言いました。

 結果的にカープに戻ってよかったですよね。ファンの方もすごく温かく迎えてくださったみたいですし。去年は(米メジャーから復帰した)黒田(博樹)さんと兄貴への声援が大きかったでしょう? それは僕も感じましたし、兄貴も開幕戦の大声援には「シビれた」って言っていました。

 野球に関して兄貴から教わったのは、感謝の気持ちとか、言い訳をしないとか、そういうことですね。野球を通じての人間形成というか。年齢が7つ離れていることもあって、そういうのをすごく教わった気がします。

 基本、両親の教えがそんな感じだったんです。そこに駒大の太田(誠)監督の教えが加わった感じですかね。例えば、打球がイレギュラーすると「チッ」とか言って、足元を蹴るようなしぐさをする選手がいますよね。これは一例ですけど、そういうのは絶対するなと。普段から感謝の気持ちを持って、グラウンド整備をちゃんとやっておけば、そこではねたりしなかったはずだと、兄貴も僕も教えられてきました。

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