黒田博樹が若手投手たちにマウンドから贈る「無言のエール」 (2ページ目)

  • 前原淳●文 Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 広島はオフにエースの前田が抜けただけでなく、開幕前には次代のエースと期待された大瀬良大地が離脱した。苦しいチーム事情の中、黒田は来日2年目のクリス・ジョンソンと昨季9勝の福井優也とともに主軸を期待された。特に日米での経験が豊富なベテラン右腕への期待は自然と、そして急速に高まっていった。

 だが、開幕までの調整には一抹の不安を残した。開幕直前のオープン戦では失点を重ねる登板が目立った。最終調整の3月20日ソフトバンク戦では4回までに7安打を浴びて5失点。予定していたイニング数に到達せずに降板した。

 ジョンソンで開幕戦(対DeNA戦)を落とした翌日の試合。最終調整から中5日で黒田は今季初マウンドに上がった。20年目の開幕だ。3回以降毎回安打を許し、常に得点圏に走者を背負った。中軸だけでなく、下位打線にも痛打された。

「いいときと比べれば物足りない。でも、ぜいたくは言っていられない」

 それでも要所では研ぎ澄まされた集中力と制球力でしのいだ。7回を投げ、許した失点は1点のみ。チームに今季初白星をもたらした。

「若い頃は相手を牛耳る投球を目指してやってきたけど、今はそれができない。頭を切り替えて、大事な場面でなければヒットはOKと考えている」

 今季初登板を見て、「しのぐ投球が今季の黒田を象徴しているのか」と思った直後の登板で、今度は圧巻の投球を見せた。

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