3年目の初勝利。ドラフト6位を育成した「二木康太プロジェクト」 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 話を"鴨池球場"に戻そう。

 気がつくと、江口と投げ合っているもうひとりの右腕に夢中になっていた。それが、鹿児島情報高の二木康太だった。

 身長187センチ。ひょろっとしたユニフォーム姿のオーバーハンドだ。初回のマウンドに上がったときの"ひ弱"な印象が、回を追うごとに変わっていく。テイクバックを小さめにとって、前で大きく腕を振る。その腕の振りの思い切りのよさが、見ているこっちの心を揺さぶってくる。真上から投げ下ろし、右打者の外角低めのストレートが初回からビシビシ決まる。

 球場のアナウンスがよく聞き取れず、二木は「にき」だとばかり思っていたら、後ろの席にいた地元の人の会話から「ふたき」だとわかった頃には、強打の鹿児島工打線のスコアボードに「0」が7つも並んでいた。

 足腰だってまだそれほど強くないはずなのに、左半身から打者に踏み込んで、両肩の線がしっかり打者を向いている。ボールを握る右腕が体の後ろに隠れてリリースが見えにくい上、踏み込んだ際に体を左右に一気に切り返すから、打者は打ちにいくタイミングが一瞬遅れてしまう。

 高校野球界ではあまり聞かない「鹿児島情報高」の投手が、じつに合理的なピッチングフォームで、県下屈指の強力打線に対して堂々と投げ込んでいく。その痛快さに心を打たれてしまった。

 江口のストレートが"剛速球"ならば、二木のそれは"快速球"。たとえるなら、浅尾拓也(中日)のストレートだ。すばらしいスピンとホームベース上での伸び。おそらく打者は、インパクトの瞬間、ボール2つから3つ分差し込まれている。

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