プロ野球の危機だから胸に響く「スパーキー・アンダーソンの金言」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

「たしかに、野球(メジャーリーグ)は続いている。でも、私の思っている野球は続いていないよ。かつて野球は、この国ナンバーワンのスポーツだった。今はアメリカンフットボールが1番だ。バスケットボールが2番で、野球は3番目だ。どうしてナンバーワンでいられなかったんだ……。私は学んだ、もしまたストライキをしたら、私には野球は必要ないと。そのことで非難しないでほしい。妻はいつも言う。『あなたは悪い野球ファンだ』と。彼女は正しいと思う。でも、私の見たい野球は、いま行なわれているようなものではないんだ」

――「野球はファンタジーなんだ」という言葉も胸に響きました。

「昔はそうだったけど、今は野球(メジャーリーグ)もリアルになってしまった。(選手や代理人が)銀行に水鉄砲を持っていって『金をよこせ』とね。野球はファン、子どもたちの楽しみのはず。それを盗んでしまったんだ。昨日のリトルリーグの試合(世界大会決勝)を見たかい? 日本のチームは負けたけど、あの泣いている姿は美しいだろ。あれがベースボールだよ。試合後は、ケンタッキーの体の大きい選手が自分の胸ほどしかない小さな選手と抱き合って敬意を表しあっていた。違う文化を超えて尊敬しあう。そのことが大切なんだよ」

 スパーキーの表情には疲れが色濃く見えたが、声をふり絞るように話を続けた。

「私はシゲオ(長嶋茂雄氏)と親しくしているけど、去年、彼から電話があって、そのときに泣けてしまったよ。日本球界にとって天皇のような人間が、私のことを気にかけてくれているんだから。シゲオが私に敬意を表してくれるのは、彼が野球を愛しているからだと思う。私も野球を愛しているよ」

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