プロ野球の危機だから胸に響く「スパーキー・アンダーソンの金言」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

 2002年の秋、カリフォルニア州サウザンド・オークスにあるスパーキーの実家を訪れた。96年に監督業をリタイアしていたスパーキーは、「今は年に15回ほど野球についての講演をして、あとはゴルフ三昧だ」と言って、笑顔を見せた。

「野球については毎朝、新聞でチェックしている。特に最近の若い選手の動向は気になるね。シアトルのボーイ(イチローのこと)がどうなっているのかは、特にね。ボーイはスピードがあって、肩も強い。パワー以外のすべてを兼ね備えた、相手を殺すことのできるオールラウンドプレーヤーだ。私はボーイのプレーを見るのが好きだよ」

 取材はポストシーズンでの戦い方が中心だったのだが、最後に当時、再びストライキに突入しようとしていたメジャーについて質問したときのことだ。90分以上もしゃべり続けた疲労もあったのかもしれない。言葉は弱く、それまでの威厳がなくなっているようにも思えた。

「94年のストのことは覚えているよ。そのときは、ジャック・ニクラウスが設計したゴルフ場で毎日ラウンドしていた。私がコントロールできる問題じゃなかったからね。翌年、シーズンが再開してもファンは戻ってこなかった。私は満員の球場で野球をするのが好きだ。それなのに、たった4000から5000人のファンしかいない……なんだか墓場に埋葬されているような気がしたものだよ」

「野球は永遠に不滅だ」という言葉に、当時、勇気づけられたと伝えると、スパーキーは大きなため息をついた。

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