2016.03.20

【根本陸夫伝】
「巨人=絶対」という球界の構図を壊した男

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

 実際、巨人が王率いるチームになった途端、郭一家の周りで気持ちが揺らぐ人間も出てきたという。球団代表の坂井も、王が台湾を訪れて郭泰源と接触することを恐れ、契約と入団発表を急いだ。王自身、「切り札」としての自覚もあったはずだから、獲得断念となったときの悔しさは相当のものだったろう。今もそれは口調に滲(にじ)み出ている。

「だから、根本さんの力っていうのは、それまで絶対破れなかったジャイアンツの壁みたいなものを破って、道を切り拓くだけのものがあった。そこがみなさん、当時の野球関係者が『根本はすごい』と言いたくなったところだと思う。ほかの球団はあきらめちゃうところ、あの人は突破したわけだよね。あの人なりの顔の広さと、幅広い人脈があって、こっちから行ってダメならあっちからとか、そういうふうに人間を動かす術(すべ)みたいなものを持っていたんだと思うね」

 逸材選手獲得で巨人の壁を突破した西武は、まさに王が監督に就任した時代に常勝チームとなっていく。奇しくも、その監督は巨人出身の広岡達朗、森祇晶だった。

「そういう意味では、結果も伴わないとダメなんだよ。いくらね、いろんな手を尽くしていい選手を獲ったって、チームとして結果が出なきゃ注目されない。ということで、根本陸夫という人は、とにかく強いチームを作りたい、という思いがものすごく強い人でしたよ」

つづく

(=敬称略)

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