「剛」の岡田明丈と「柔」の横山弘樹。2人が埋めるマエケンの穴 (4ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 ブルペン捕手曰く、キャンプ中に行なわれた紅白戦で打ち込まれ、フォームも“2段モーション”とみなされ、ボークまで取られたそうだ。

 それでもボールは一級品だ。長いリーチがしなやかに伸びて……というタイプじゃない。バネ仕掛けのように腕がビュンと振れ、そのまま脇の下をくぐって背中をポンと叩く。そのスピードと小気味よさが痛快だ。

 とにかく、昨年の岡田は凄かった。大商大3年までまったくノーマークだった投手が、何がきっかけでそうなったのかわからないが、4年の春と秋のピッチングはただただ凄いのひと言。2季連続12連勝という結果も圧巻だが、その“投げっぷり”は背中がゾクっとしたものだ。

 コンスタントに145キロ前後を投げ、たまに150キロを超して見せる。さらにスライダーとフォークに、もうひとつなにか妙な揺れ方で落ちるボール。パームか、ナックルか……岡田にもそういう秘密兵器があるのだろう。

 それ以上に「いいピッチャーになったなぁ」と感心したのは、自分と相手の実力を計りながら、「こっちが上だ」と見極めると、ストレート一本でねじ伏せにかかる。見ていて意図のあるピッチングができるようになっていた。

 かつては捕手に向かって投げるだけで精一杯だった投手が、打者の様子をうかがいながら投げられるようになる。これこそが、本当の意味で「投手誕生」の瞬間なのだ。

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