タオルを振る京大プロ投手「田中英祐よ、もっと無責任にやれ!」 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 さらに2日後の5月1日の日本ハム戦にもリリーフ登板。3回を投げて被安打6、四球4、失点4とまたしても結果を残せず、その試合後、田中は早くも二軍降格を言い渡された。

「内心、もうちょっとやれたという気がしますけど、1年通して投げられなかったのは、まだまだ力がなかったということだと思います」

 異変が起きたのはそれからだ。田中は7月11日のイースタン・リーグDeNA戦で1イニングを投げたきり、一度も実戦マウンドに立つことなくシーズンを終えた。

 小谷コーチは淡々と当時を振り返る。

「ピッチャーっていうのは、ある日突然つかむこともあるし、ある日突然おかしくなることもある。田中は責任感を感じすぎて、力みすぎて、違う方向に入ってしまったように感じたね」

 投球フォームの崩壊。二軍降格後のイースタン・リーグでの成績は、計19回を投げて被安打26、四死球21、自責点20、防御率9.47と惨憺(さんたん)たるものだった。

 シーズン後の秋季キャンプでも、田中はほとんどボールを握ることなく、ランニングやシャドウピッチングで土台づくりに集中していたという。

 これまでの野球人生で、ここまでフォームを崩したことはあるのか。そう聞くと、田中は苦笑いを交えながら「今までそんなに長いことやってないですからね。大学の最後しか結果を残していないですから」と答えた。

 今年の目標は「どこかで上(一軍)で投げること」だという。牛歩の歩みでじりじりと日々を送りながら、それでも田中に悲壮感はない。

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る