タオルを振る京大プロ投手「田中英祐よ、もっと無責任にやれ!」
「田中、お前はシャドウからな」
石垣島でのロッテ二軍キャンプ。ブルペンに入ろうとした田中英祐に、小谷正勝投手コーチが声を掛けた。田中は静かにうなずくと、白いタオルを右手に握って、ブルペンのマウンド上でシャドウピッチングを始めた。しばらくタオルを振ったのち、今度はボールに握り替えてピッチングを開始したのだが、その内容は明らかに周囲の投手とは異質なものだった。
京大初のプロ野球選手として注目を集めたロッテ田中英祐
捕手を立たせた状態の「立ち投げ」の時間が長く、捕手を座らせた後も球種はストレートのみ。クイックモーションで投げることもない。時折、リリースポイントが乱れて、捕手が捕れないような大暴投のシーンも見られた。そのたびに田中は自分の頭部付近で右手をひらひらと動かし、リリースポイントを確認するのだった。
投球練習を終えた田中は、自身の現状についてこう語った。
「小谷さんからは下半身を連動させることと、リリースポイントについてアドバイスをいただいています。ボールに力が伝わるポイントがあるので、そこを固めている段階です。変化球はまだ投げていません。早くやりたい気持ちもありますけど、今の感じだと焦ってもついていかないので......。今、取り組んでいることに集中してやらせてもらっています」
もはや、「開幕一軍」などと言えるような段階ではない。昨季、史上初の京大卒のプロ野球選手として話題になった田中は、今春のキャンプでフォームを一からつくり直していた。
「結局、まだ『自分のもの』と言えるものがなかったということだな」
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